連載企画「私の授業改善」

連載企画 第18回 「私の授業改善」

工学部第一部機械工学科の

ものづくりPBL -風力発電コンテスト-

 

工学部第一部  機械工学科

教授 石川 仁

 

 工学部第一部機械工学科のPBL(Project Based Learning)をご紹介します。以前に関連の学会誌(1)でも紹介したものですが、本学科の山本誠先生と一緒に行っています。PBLは日本語では「課題解決型学習」といわれ、通常の講義とやり方が異なります。具体的な課題に対して、ディスカッションを中心にグループワークを行いながら、解決案を見いだしていく学習方法です。PBLの特徴として、

(1)具体的な課題を提示されること。

(2)グループワークで行うこと。

(3)レポートやプレゼンテーション等で解決案の報告をすること。

等がありますが、そこに機械工学で重要な「ものづくり」の要素を加えました。課題には、風力発電の風車の翼製作を選びました。最近は身近になった風力発電ですが、東日本大震災以降はとくに再生可能エネルギーの手段として注目が集まっていますので、学生にとっても関心の高いテーマといえます。この、題して「風力発電コンテスト」は、風車の翼部分をグループで設計・製作し、実際に風車を回して発電量を競うものです。発電システムの製作には参考文献(2)を参考にしました。

 加えて本学科PBLのオリジナル点として、

(4)風車の製作や発電量の計測に関して競技ルール(=制約)を設ける

   こと。

(5)製作に関して制限時間(=締切)があること。

があります。実際に工学が必要とされる現場では、課題解決にあたって「制約」や「締切・納期」が課せられることがほとんどです。また「締切・納期」までの限られた時間で解決案を出さなければならないということは、自ずとスケジュール管理が必要になります。 

 翼の材料はA3のスチレンボード1枚とB4のケント紙1枚のみです。コンテストは3~4名を1チームとして行います。コンテストの様子を順に説明します。

①各自で翼のアイデアを考える。

 まずは学生一人一人で翼のアイデアを考えます。はじめのプランを見ていますと、実際の風車の翼そっくりのものや換気扇の羽に似たものが多く、その形状も似たり寄ったりです。このPBLは風車の設計に必要な流体工学の授業を受ける前の1年生を対象としています。既成概念に捕らわれない自由な発想の斬新な風車を期待しているのですが、いかがなりますでしょうか。

②グループディスカッションを行い、チームで一つの翼を採用・設計する。

 各自のアイデアを元にディスカッションにより、本番用の風車翼を一つだけ設計します。お互いコミュニケーションを取りながら、考えをまとめることに充実感を得る学生も多いようです。学生が積極的に参加しながら、複数の意見をまとめ、一つの目的を達成するプロジェクトマネージメントの経験を得られます。

③試作翼の製作とテスト、コンテスト本番用翼の製作

 翼の材料には限りがありますので、よく検討して試作、コンテスト本番用の翼を作成しなければなりません。コスト管理の概念も必要になります。また、ここでは翼の製作技術が大切になります。カッターやはさみなど簡単な工具は使用できますが、設計どおりの形に近づけることの困難さを味わいます。「ものづくり」の難しさ、楽しさ、そして機械工学の根幹である機械工作技術の重要性を座学と違った形式で学んでもらいます。

④翼のプレゼンテーション、競技コンテスト

 本番のコンテストでは、各グループが自分たちの風車の特徴、工夫した点をプレゼンテーションした後、競技を開始、発電量を計測します。競技ルールも風力として用いる扇風機からの距離など、細かく決まっているので真剣です。発電量の大きなチームには他からも大きな声援があがります。

⑤結果発表、講義、レポート作成

 発電量の上位が発表され、その後、初めて流体力学、風車の基礎理論の講義を受けます。風車の種類や特徴、風車を回す力となる流体力の理論などを聞きます。たった今実際に経験したこともありますので、通常の講義よりも実感しやすいところもあるようです。授業の感想などはレポートにまとめます。 

 「ものづくり」を取り入れたPBL、他にもいろいろアイデアを考えて、皆様も行ってみてはいかがでしょうか?

 

 

【参考文献】

(1)石川 仁、山本 誠 : “学部と大学院生の風力発電コンテストについて”

   日本流体力学会誌「ながれ」、26巻2号、pp.81-85(2006)

(2)三野正洋 : “自転車の発電機でマイクロ風力発電に挑戦”、パワー社(1981)